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[高圧ガス 甲種機械]鉄系金属材料とは?種類と特徴について解説

高圧ガス

高圧装置用の材料としては、金属材料は主要な構成材料であるため高圧装置の材料を選定する場合には、材料の強度・耐食性・経済性などを考える必要があります。

そこで、本ページでは鉄系の金属材料に関して種類や特徴をわかりやすく解説します。

 

炭素鋼

まず、金属材料と聞いて一番私たちの身近なものとして炭素鋼(carbon steel (CS))があります。

純粋な鉄だと柔らかすぎるため炭素(C)を炭素鋼の機械的性質0.02~2%程度含まれることで強度を持たせ様々な装置用材料として利用されています。

鉄は炭素を含有していくことで、その状態が図1のように変化していきます。

鋼中の炭素含有量が変化することでフェライト相とセメンタイト相の比率や混在状態が変化して、金属組織が変化します。
また、炭素含有量に応じて以下のように名前がついています。

  • 共析鋼:C量0.77%の炭素鋼。全体がフェライトとFe3Cの層状の共析組織(パーライト)になる。
  • 亜共析鋼:C量が0.77%以下の炭素鋼。フェライトとパーライトからなる。
  • 過共析鋼:C量が0.77%以上の炭素鋼。セメンタイトとパーライトからなる。

 

 

炭素鋼の機械的性質

炭素鋼の機械的性質はC量によって以下のように大きく変化します。

  • 引っ張り強さ:C量の増加とともに大きくなる。共析組織で最大。
  • 降伏点:C量の増加とともに大きくなる。共析組織で最大。
  • 吸収エネルギー※1:C量の増加とともに小さくなる。
  • 遷移温度※2:C量の増加とともに上昇する。

※1 吸収エネルギー…伸び、絞り、靭性の指標。衝撃試験によって求められる。
※2 遷移温度…延性から脆性に変わる温度。衝撃試験によって求められる。

 

炭素鋼の熱処理

鋼は種々の熱処理によって組織を調整し、所要の性質を得ます。
その熱処理の中でもよく行われるものとして以下の4つがあげられます。

  • 焼なまし
  • 焼ならし
  • 焼入れ
  • 焼もどし

焼なまし

種々の目的で行われる熱処理です。このうち完全焼なましは、亜共析鋼ではオーステナイト域、過共析では共析変態温度以上に加熱保持し、炉冷する操作で、やわらかい層状パーライトを形成し軟化させます。

ほかにも、残留応力の除去、硬度の低下、加工性の改善、結晶組織の調整、機械的性質の改善などを目的として鋼を適当な温度(共析変態温度以下)に加熱保持したのち、緩やかに冷却する操作もあります。

焼きならし

結晶粒の微細化、炭化物の調整、内部応力の除去を目的に行われる操作になります。
焼入れと比較して冷却速度が遅いのが特徴です。

オーステナイト域に加熱したのち静かな大気中で空冷するため、鋼の結晶粒が微細化し、主に靭性などの機械的性質が改善されます。

焼入れ

鋼を亜共析鋼ではオーステナイト域に、過共析鋼では共析変態温度以上に加熱したのち、急冷し効果される熱処理です。

焼ならしと比較して急速に冷却するため内部に残留応力が残ってしまいます。

焼もどし

焼入れによって生じた内部応力を除去するために行われる操作になります。焼入れした鋼を共析変態温度以下の領域で再加熱してから冷却します。

圧力容器など高い強度が必要な場合には焼入れしたままの材料は用いられることなく、必ず焼もどしが行われます。

 

低合金鋼

C以外の合金元素を少量添加した鋼を総称して低合金鋼といいます。一般的に添加元素の合計は5%以下の場合を低合金鋼と呼び、5~10%の含有率のものは中合金鋼と呼びます。

合金元素の特徴と役割

炭素(C)

C量に比例して降伏点、引張強さおよび硬さが上昇する反面、伸び、絞りおよび靭性が低下します。
そのため圧力容器に使用する鋼材で溶接を行うものは0.35%以上のCを含んではいけません。

ケイ素(Si)

脱酸剤として用いられるほか、延性および靭性を損なうことなく強度を高めることができます。

マンガン(Mn)

Siと同様に脱酸剤として用いられます。Mnが2%程度以下ではMn量に比例して降伏点および引っ張り強さが増加するが、炭素と異なり伸び、絞り、切欠き靭性は低下しないため機械的性質を向上させる合金元素として広く使用されています。

ニッケル(Ni)

Niは炭化物を形成しないため強度と靭性を増加させるのに使われます。
そのため、強度と靭性が同時に要求される極厚鋼材には0.2%~1.5%添加されています。

また、多量のNiを含有する鋼材は低温用鋼として用いられ-70℃~-196℃の温度範囲で使用されています。

クロム(Cr)

Crを含有した鋼は高温強度が高いうえに耐酸化性が良好なため、Moと組み合わせ400℃~650℃の高温の温度帯でよく使用されています。

モリブデン(Mo)

Crとともに高温用鋼に用いられるほか、抵合金高張力鋼にも使用されています。

アルミニウム(Al)

脱酸剤として広く用いられるほか、低温靭性を大きくする特徴があるため低温用鋼などに用いられます。

 

ステンレス鋼

ステンレス鋼は約11%以上のCrを含有し、耐食性の向上を目的とした鋼になります。11%以上のCrを含有しているため表面は非常に薄くて安定な不動態皮膜を形成してほとんど腐食しなくなります。

さらにステンレス鋼は高温強度、低温靭性にも優れているため高温材、低温材としても幅広く使用されています。

Fe-Cr系ステンレス鋼

Fe-Cr系ステンレス鋼は1000℃前後に加熱すると、C量が少ない場合はフェライト組織となりますが、C量が多い場合にはオーステナイト組織になります。

代表的な鋼種としては、13Cr系のSUS405や18Cr系のSUS430があり、後述するオーステナイト系ステンレスであるSUS304、SUS316に冷却水環境で起きる塩化物応力腐食割れが起きない特徴があるため使用されるようになっています。

Fe-Cr-Ni系ステンレス鋼

オーステナイト系ステンレス鋼の基本は18Cr-8Ni-Fe系のSUS304であり、耐食性、加工性、溶接性のいずれもがFe-Cr系ステンレス鋼より優れています

加えて高温強度および低温靭性にも優れているため高温材、低温材として幅広く使われています

一方でオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304は使用環境によっては粒界腐食、孔食、応力腐食割れなどの局部腐食を生じることがあります。

この欠点を改善するために様々な改良型が開発されています。

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