溶接は部品と部品を接合させる加工方法で、フランジ継手やねじ継手などの機械的接合方法と並んで代表的な接合方法になります。
溶接は大きく分けて融接法、圧接法、ろう接法の3つに大別されます。
その中でも融接法は接合したい部分の一部を溶融させ、自然凝固させて接合させる方法です。部品を加熱するため熱の影響を大きく受けてしまいます。
しかし、金属材料、溶接材料、溶接機の開発・改善により溶接部の機械的性質が母材とほぼ同等な機械的性質が得られるようになってからは、飛躍的に発展を遂げています。
今回はその中でも圧力容器、造船、建築構造物など広い分野で用いられているアーク溶接に関して種類と特徴をまとめていきます。
アーク溶接とは?
アークとはガス中を電気が通じる現象である放電の一種で、通常大気圧以上で生じる放電現象を指します。
通常のガスは、金属導体と異なり電気を通す媒体となる自由電子などがなく、密度が格段に小さいため、電気を通じるためには、イオン化させる必要があります。
そのため、アーク中ではガスをイオン化させる必要があります。ガスがイオン化するためには非常に高い温度が必要であるため、アーク溶接でのアーク温度は5000~50000 ℃程度と言われています。
アーク溶接機の性能向上により、高温度熱源を容易に得られるようになったため、急速に広がり今では溶接といえば一般にアーク溶接のことを指すようになりました。
続いて代表的なアーク溶接方法についてまとめます。
被覆アーク溶接
被覆アーク溶接棒と被溶接部との間にアークを発生させて溶接を行うものです。
手軽な上に溶接部の機械的性質が比較的良好なため、広範囲に使用されている手動のアーク溶接方法で鉄鋼・ステンレス鋼など多くの金属溶接に使用されています。
被覆アーク溶接のアーク温度は6000℃前後であり、この高温により被覆アーク溶接棒および母材の一部を溶融させて溶接を行います。
また被覆アーク溶接棒にはフラックス(被覆材)が含まれており、フラックスにはガス発生剤、アーク安定剤、脱酸剤および合金添加剤などが含まれています。
被覆アーク溶接機は垂下特性(電圧が高くなると電流が減少する特性)を有する電源で、一般的には交流のものが用いられます。
ティグ(TIG)溶接
タングステン電極と被溶接部との間にアークを発生させて、電極・アークおよび溶接部を不活性ガスのシールドガスで覆い溶接を行う方法です。
TIG溶接は空気の侵入をほとんど防止した状態で溶接することができるので大きな金属を溶接することができます。
被覆アーク溶接とは異なり、電源として交流・直流の両方が用いられます。
一般的に鉄鋼などでは、通常アークが安定な直流棒マイナスが使用されます。
またアルミニウムやその合金の溶接では酸化被膜上には陰極点が生じやすい性質があるので、交流電源を用いると母材が陰極のときに、母材表面の酸化被膜上を陰極点が走り回り陰極点の高熱により酸化膜を破壊してしまいます。(この作用のことをクリーニング作用といいます。)
サブマージアーク溶接
あらかじめ散布された粒状のフラックス中に電極(ワイヤ)を送給し、ワイヤ先端と母材との間にアークを発生させて溶接を行う方法になります。
溶接部表面が比較的なめらかで溶接後の整形作業がほとんど不要なのが特徴です。
非常に高効率な溶接方法になるため、鉄鋼材料のうち厚板の下向き姿勢の自動溶接など広く利用されています。
ガスシールド消耗電極式アーク溶接
ガスシールド消耗電極式アーク溶接は自動的に供給されたワイヤの先端と母材との間にアークを発生させ、アークおよび溶接金属をガスで覆い大気から保護した状態で溶接を行う方法です。
このシールドガスの種類がアルゴンなどの不活性ガスの場合はミグ(MIG)溶接、炭酸ガスあるいはアルゴンと炭酸ガスとの混合ガスの場合はマグ(MAG)溶接と呼びます。
特に炭酸ガスを使用した炭酸ガスアーク溶接は鉄鋼の溶接に広く用いられており、ミグ溶接はアルミニウムおよびステンレス鋼に広く使用されています。
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